スランガン

洗礼

2016年12月30日
ここははバリ島の南東部にある、
スランガンというサーフポイントで、
雨季の11月から3月くらいまでがベストシーズン。
クタ市内からバイクで約30分の所にあります。
波の方はそれほどハードではなくて、
ソフトな波質なので初心者でも楽しめます。
しかしたまにアクシデントが起こります。


僕がレンタルしていたボードですが、
見事に半分に真っ二つに折れています。
ここでサーフィンをしていた時のことです。
僕は波待ちをしていて異変に気づきました、
ボードに波が当たる音がおかしい?
ベッコンベッコンという感じで、
よく見るとボードの両端からヒビが入り、
かろうじて表面のクロスだけでボードが、
つながっている状態でした。
僕はすぐに岸に向かってパドリングしました。
一瞬でいろんな思いが頭の中をよぎりました。
次に来たセットに巻かれるとやばいなぁ、
事故を起こしたくはないなぁ、
何よりビーチハウスの人に、
迷惑をかけたくはないと強く思いました。
ここのビーチハウスのご主人は、
すっごく親切でフレンドリーな方で、
ボードを安く貸してくれたり、
朝の忙しい時にわがままを聞いてくれて、
パンケーキを焼いてくれました。
そのパンケーキにはハチミツが、
たっぷりとかかっていて、
ビーチハウスで食べてるとは思えないほど、
心に染みる美味しさでした。
岸に向かってパドリングを始めてすぐに、
後ろからセットの波が来てブレイクする音が!
僕は波に巻かれてわやくちゃにされました。
海面から顔を出すと数メートル先に、
ボードの上半分がプカプカ浮いていました。
まずそれを確保しに行きました。
そして下半分のサーフボードに、
ブギーボードの様に腹ばいになり、
片手に上半分のボードをつかみながら、
パドリングをして岸に向かいましたが、
片手でパドリングしても、
なかなか前には進みません。
海岸を見ると3人ほど心配そうに、
僕の様子を見ていました。
10分?20分?かかってようやく、
海岸にたどり着くことが出来ました。
そこにはビーチハウスのご主人がいました。
ビーチハウスのご主人と握手をしながら、
「無事に帰れるように祈っていたよ」
お互いに何事も無かった事に感謝をして、
この平凡な日常に感謝をしました。
いつ、どこで、何が起きるのか?
誰にも分かりません、
誰のせいでもありません。
僕たちは受け入れるしかありません。

日常

ビーチハウスの裏には普通に当たり前のように、
牛さんがエサを食べに来ています。

観光客が中身を飲み干した果実の実を、
ムシャムシャと食べています。
まわりには車やバイクが停まっている場所に、
牛さんがエサを食べている平和な日常の光景、
毎日同じ場所で同じ事が続けば、
それは当たり前の光景になってしまう。
もしそれが国家同士の争いだとしたら、
最初は世界中が注目するでしょう。
心配をして嘆き悲しむ事でしょう。
しかし時間が経つことに、
その事に慣れてしまって、
心配する事に疲れてしまい、
やがてその事を忘れたいと思うようになる。
自分の日常を取り戻したくなる。
人間は周りが同じ事の繰り返しの日常に、
心が安らぐ生き物。

ビーチハウス

懐かしい光景であり思い出の場所。
今は見る事は出来ない手作りのビーチハウス。

僕はここに来る事が出来て本当に良かった。
やがて消えゆくすべてのものに、
一瞬でもすれ違い同じ時と同じ空間を共にした事。

ビーチハウスの中では常連さんの、
お土産売りやマッサージのおばさんが、
観光客を相手に勉強をした、
外国語と笑顔を駆使して生活の糧を得ようと、
今日も奮闘しています。

左のトイレは水かめが置いてあり、
手で洗う方式で紙は置いてありませんでした。
右の部屋は調理をする場所です。

当時はサーフガイドと観光客が早朝にここに来て、
朝食を共にするのが一般的だった様です。
コーヒーを飲みながら今から始まる、
新しい事そして知らない事への挑戦に、
ワクワクドキドキしているようです。

海を見ながらゆっくりとのんびりできる、
ビーチチェアがずらりと並んでいます。
ここに来る人たちは本当に、
ゆっくりとのんびり過ごしていました、
本を読みながらドリンクを一口飲んで、
海をボ〜ッとしばらく眺めて、
また本を読みはじめる。
時の流れに身を任せて目の前の自然と、
ゆったりと呼吸を合わせている。
人間は地球の営みに感謝をするどころか、
憎しみと復讐心を抱いていると思う。
人類は何を急いでいるのか?
どんな答えなら満足をするのか?

満足

地元の人が獲ってきた魚を片手に、
誇らしげに帰ってきました。
その顔はとても満ち足りていて、
穏やかな表情でした。
多くを望まず足るを知る。

僕はバリ島が大好き!
僕はサーフィンが大好き!
このふたつと出会えてなかったら、
僕はこの世に存在しなかった。

定期便

エンジン音が聞こえて空を見上げる。
小さい機影が頭上を通り過ぎて行く。

もしかしてあの世でも、
天国と地獄に向かう飛行機があって、
僕たちの意思に関係なく行き先を告げずに、
魂を運ぶ為に飛んでいるかもしれない。
空と海との間の小さな空間と地上に、
束の間だけ住まわせてもらっている、
生きていても死んでもなおさら、
自分が何者かを知らない孤独な存在、
「人間」